【土地相続Q&A】どうするのが一番得?農地相続の流れと方法・費用

「親父がなくなって(母はすでに他界)、親父がずっと放置していた田舎の田んぼ※1を自分が相続することになった。何をどうすれば良いか分からない。」

先日、知人からこんな質問をされました。不動産を相続する時には、ずっと放っておいた田畑や空き地などを相続する場合があります。株や債券なら保有するか売却するかの判断は比較的し易いですし、売却も容易にできます。しかし、不動産となると何をどうして良いか分からない方が多いのも事実です。

今回は田んぼや畑など、親がずっと放置していた、少し特殊な不動産を相続していた時に何をすれば良いか?というお話です。結論を先に言うと、田んぼを宅地に変えて売却することを薦めました。

※1以下、田んぼの事を「農地」と表記することがあります。

目次

1.農地は普通の土地とは全然違う
1-1農地の特徴
1-2農地の名義変更について

2.相続の流れ
2-1遺言書があるかを確かめる
2-2農地法の届出について
2-3相続登記(名義変更)の方法
2-4相続登記にかかる費用

3.農地を取得した後どうするか?
3-1農地のまま他人へ売却する
3-2農地を宅地へ変更して建築物を建てる
3-3農地を宅地へ変更して売却

4.売却する時には不動産会社選びは慎重に
4-1不動産会社は農地法に明るい会社にする
4-2必ず複数の会社に査定を依頼しよう
4-3イエウール※5という一括査定サイト

5.まとめ




1.農地は普通の土地とは全然違う

農地は普通の土地とは扱いが全然違います。まずはそれについて認識しておきましょう。

1-1農地の特徴

まず、農地が他の土地とは何が違うのでしょうか?農地は農地法という独自の法律があります。これにより農地の売買が制限されたり、農地から宅地への転用※2に許可が必要だったりします。なぜ農地だけ独立した法律があるかと言うと「日本の食料の安全供給」のためです。極端な話、日本の農地全てを宅地にしたり、農家以外の人に勝手に売られたりしてしまえば、日本国内で米の生産が出来なくなってしまいます。そのため、米などの農作物の生産を守るために農地法があるのです。

今回の相談者の場合は登記簿に「農地」とハッキリ記載があるので気にする必要はないですが、登記簿が農地でない土地も農地として扱われる場合があります。登記簿では農地でなくても、実際に「耕作」を行っていれば農地として扱われるので注意しましょう。

※2転用とは目的を変える事。この場合は農地ではなく、家など建てられる宅地への変更を指す。

1-2農地の名義変更について

農地の名義変更を行う時には、農地法の許可が必要です。前項でのお話の通り、農業を安易に辞められては困ってしまうからです。そこで農地を簡単に手放せない(名義を変更させない)ために、農地法の許可がないと名義変更できないようにしているのです。

しかし、今回のように農地を相続する際には農地法の許可は不要となります。あくまで相続であり、意図的に農家を辞めようという事ではないからです。注意点は、遺言書が存在し遺言書の内容で法定相続人以外の第三者が相続する場合は、農地法の許可が必要になります。(詳細は後述します)

法定相続人が相続する場合には農地法の許可は不要ですが、「届出」は必要になります。農地を相続する時は、農業委員会への届け出る必要があり、期限も相続発生から10か月以内と決まっています。これを怠ると、10万円以下の罰金が課せられる場合がありますので注意しましょう(届出の方法は後述します)。

これは農地を相続したものの、長期間そのまま放置されることを防ぐためです。農地を放置されると、誰の農地か分からなくなる「耕作放棄地」になってしまうからです。

2.相続の流れ

それでは、実際の相続時の流れの話に移ります。今回のように農地を相続したら、まずは「遺言書」を確認しましょう。その後に、相続登記(名義変更)の手続きをします。勿論、相続人が自分以外にいないかの確認や遺産が他にないかなどの確認は必要です。今回の相談は、相続人は相談者一人で、遺産も農地のみでしたので、この辺りの話は割愛します。

2-1遺言書があるかを確かめる

相続が発生したら、まず遺言書の有無を確かめましょう。基本的には、被相続人(この場合は相談者の「父」)が遺言書を作成していた場合、相続人(この場合は相談者である「子))は認識している場合が多いです。

しかし、遺言書が残っている事が知らされていない場合には確認が必要です。先ほど言ったように、もし相続人が第三者(本来相続人にならない人)であれば、農地法の許可が必要になってくるからです。

注意点は、仮に遺言書があっても、すぐに開封してはダメです。家庭裁判所に「検認」の手続きをすることが先になります。この「検認」という手続きは、相続人全員に遺言書の存在と内容を知らせ、遺言書の偽装などを防止するための手続きになります。検認せずに開封をしても遺言書自体が無効になるワケではありませんが、罰金がかかったり、相続登記や預金通帳などの相続手続きが出来なくなったりします。

2-2農地法の届出について

今回のケースですと、相続人は子である相談者ですので、農地法の許可はいらず届出のみになります。具体的な届出の方法は以下の通りです。(農地法第3条の3第1項の規定による届出)

<概要>
・届出人:相続等により農地を取得した人
・届出期限:農地取得を知った日から概ね10ヶ月以内
・届出先:農地が所属している農業委員会

<届出に必要な情報>
・権利を取得した者の氏名・住所
・届出に係わる土地の所在等(所在・地番、地目(登記簿・現況)、面積、備考)
・権利を取得した日
・権利を取得した事由
・取得した権利の種類及び内容
・農業委員会によるあっせん等の希望の有無

特別用意するものとしては、不動産の登記簿が必要です。登記簿がないと地番や面積など土地の詳細が分からないからです。登記簿は最寄りの法務局に行くか、インターネット上から手続き※3をして取得します。

また、この届出制度には、先ほど言った「耕作放棄地になるのを防ぐ」以外にもう一つの目的があります。それは、相続によって農地等を取得した人が、その農地等を利用できない場合、 農業委員会が貸借のあっせん等を行うという目的です。農業委員会では、届出があった農地について、キチンと利用されるかを調査します。調査の結果によっては、届出をした相続人に対し、 貸し借りのあっせんや相談などを行います。

※3「登記情報提供サービス」  
http://www1.touki.or.jp/

2-3相続登記(名義変更)の方法

農業委員会に届出をしたら、いよいよ通常の土地と同様の手続きをします。まずは必要書類についてです。ここで言う被相続人は亡くなった父を指しており、相続人は子である相談者のことです。

・被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まですべて)
・被相続人の住民票の除票
・相続人全員の印鑑証明書
・相続人全員の住民票
・不動産の固定資産評価証明書(年に一度所有者に郵送されます)
・不動産の全部事項証明書
・遺産分割協議書(相続人が複数いる時のみ。今回の相談内容だと不要)

こちらの書類と合わせて、「相続登記申請書」の作成を行います。相続登記申請書とは、法務局に不動産の名義の書き換えを申請する書類のことです。それを持って最寄りの法務局に提出します。提出から1~2週間後に新しい権利書が発行され相続登記が完了します。

2-4相続登記にかかる費用

相続登記の費用は物件によって変わりますが、概ね15万円~30万円程度です。但し、以下のように相続登記にかかる費用は固定資産税により大きく変わります。そのため、広大な土地や固定資産税評価額(不動産評価額)が極端に高い場合は、これ以上の費用がかかりますので確認はしておきましょう。

・戸籍謄本や印鑑証明書など:1通200円~800円
・不動産の全部事項証明書 :600円/1物件
・登録免許税 :固定資産税の0.4%※4
・司法書士報酬料       :5万円~(司法書士事務所によって異なります。)
・その他交通費など

※4詳細は国税庁ホームページをご覧ください
https://www.nta.go.jp/taxanswer/inshi/7191.htm

3.農地を取得した後どうするか?

さて、農地を相続し無事に登記を終えたら、その農地をどうするかを考えなくてはいけません。通常の宅地とは違い、色々制限がありますので注意しましょう。方法としては以下の3種類があります。

① 農地のまま他人へ売却する
② 農地を宅地へ変更して建築物を建築する
③ 農地を宅地へ変更して売却

最初に言った通り、今回のケースでは①③の方法を薦めました。

3-1農地のまま他人へ売却する

農地として使われていた土地を、新たな所有者が農地として利用する場合、農業委員会、または都道府県知事の許可が必要です(農地法第3条)。許可申請自体は、通常農業委員会に申請します。今回のケースでは、相談者のお父さんは田んぼをずっと放置していました。ただ、現状は田んぼであるはずなので、農地と認定される可能性が高いです。そのため、この第三条の許可は必要になります。

この許可申請をしたら受理されるまで売却出来ないワケではありません。許可申請と同時に売却活動を行えます。もし、買い手が見つかれば売買契約を結ぶことも可能です。但し、申請をして農業委員会が不許可にした場合には不動産の売買契約は無効になります。そのため、購入検討者がいても許可が下りるまで待つか、「不許可なら売買契約を解除する」という停止条件付で契約を締結すると良いでしょう。

3-2農地を宅地へ変更して建築物を建てる

まず、農地法第4条の許可を取り、農地を宅地に転用する必要があります。ここで注意するべきポイントは農地法と都市計画法の関係です。農地法は「農業の生産力を維持したい」という目的に対して、都市計画法は「住みやすい街づくり」が目的です。

都市計画法で「市街化区域」内にある農地の場合は、農地法の目的である「農業の生産力の維持」という役割は既に終えています。つまり、都市計画の目的である、住みよい街づくりの方が優先されるということです。そのため、市街化区域内であればこの第4条(転用)の許可は不要で、届出のみで良いとされています。

但し、注意点としては宅地に変更出来たからと言って、建物を建築できるかは分からないという点です。なぜなら、宅地に家を建てるためには建築基準法に即した接道を満たしている必要があるからです。また、元々農地であったとすると地盤が緩く、高低差があります。そうなると建物を建築するには、土を入れ替える地盤改良工事などの造成が必要になる可能性があります。

仮に、農地が市街化を抑制する区域である「市街化調整区域」内にあった場合では、第4条の許可が必要になります。許可が下りるかどうかは場所によりますので、農業委員会に問い合わせてみましょう。そもそも市街化調整区域では、新しく建物を建築する事が極端に制限されているため、宅地に変更しても売却は難しいと思います。

今回相談を受けたケースでは、農地は市街化区域内にありましたので宅地へ転用が可能でした。しかし、田舎の田んぼと言う事で、そもそも相談者の方はそこに移り住む気はありません。農地を宅地に転用した後、建物を建ててから売却という方法もありますが、それは薦めなかったです。エリア的にニーズがあるとは思えなかったのと、費用もかかるためリスクが大きいからです。

3-3農地を宅地へ変更して売却

これは前項3-2で話をした、農地から宅地への変更後に売却する方法です。この場合は農地法第5条の届け出が必要になります。これも先ほどの第4条と同様、市街化区域であれば問題ありません。

但し、通常の不動産売却よりも厳しい売却活動になる点は認識しておきましょう。先ほど言ったように大規模な造成が必要になる場合があるからと言う点が一点。それに、元々田んぼであったということは、住宅街としての街づくりが行なわれていません。市街化区域とは言え、公園や公共施設が近くにないなどの不便さが大きなデメリットになるでしょう。

不動産会社に査定を依頼する時も注意しましょう。第5条も第3条と同様、申請をすれば売却活動が可能で売買契約も結べます。しかし、不許可になれば売買契約は無効になるので、許可が下りる前に締結する時は停止条件付契約にしましょう。

4.売却する時には不動産会社選びは慎重に

上記3-1、3-3いずれの方法で土地を売却するにせよ、通常よりも売りにくい事は間違いないです。だからこそ、売却を担当する不動産会社は慎重に選ばなくていけません。

4-1不動産会社は農地法に明るい会社にする

ベストな不動産会社は、全く同じようなケースの不動産を売買したことがある不動産会社です。前項のように「停止条件付契約」のフォーマットがあったり、造成工事が必要か否かを判断したり出来る不動産会社が望ましいです。更に、工事費用の見積もりを関係会社で算出できると尚良いです。とにかく、実績と経験、ノウハウが豊富な会社を選びましょう。

4-2必ず複数の会社に査定を依頼しよう

不動産会社を見極めるタイミングは査定の時しかありません。そのため、査定を一社や二社だけだと、前項のようなノウハウがある会社に出会えないかもしれません。今回のケースは「高く早く売ってくれそう」というよりは、「確実にミスなく売ってくれそう」という視点で選ぶべきです。査定額の根拠は勿論、そもそも購入しそうな顧客を抱えている事や、売却フローを完全に理解していることも重視しましょう。

4-3イエウール※5という一括査定サイト

私が相談者の方にお薦めをしたのは、イエウールという一括査定サイトです。このサイトを利用すれば、一度物件情報を入力するだけで最大6社の会社に査定依頼を出来ます。今回のケースは、相談者が住んでいる所からかなり離れた場所の土地であったため、現地にはほとんど行けません。そのような理由で、現地近くで店舗を構えている不動産会社を優先して探す必要がありました。

その中でも良い会社を選びたかったので、とにかく色々な不動産会社が参加しているサイトを探しました。調べた限りでは、参画企業数が一番多いのがイエウールでしたので、このサイトをお薦めしたというワケです。相談者の方は、このサイトを実際に利用し、地元に店舗を構える大手の不動産仲介会社に依頼をしたそうです。現在はまだ売却活動中ですが、検討者も現れて順調に進んでいるようです。

※5イエウール
https://ieul.jp/

5.まとめ

このように、相続の中でも農地の相続は非常に複雑です。手続きは勿論ですが、不動産会社も農地の売却に慣れていないと、顧客を見つけてくる事すら難しい場合があります。それに、農地を売却する場合は、通常の不動産の売却に比べ、自分で調べたり、手続きをしたりすることが多いです。例えば、農地法5条(農地を転用して売却する)の許可申請などが挙げられます。

そのため、不動産会社に頼りすぎず、自分でメリットデメリット、手続きの流れ、注意点を理解して売却することが大切です。




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